2022年秋の広島旅行は久々の憧憬の路を楽しむことができ感無量の旅となった。
例年、土日で竹原を楽しんだ後の月曜は他の観光地を巡っており、今回は今まで行ったことのなかったマツダミュージアムへ足を運ぶことにした。
当然、マツダ車オーナーである自分にとっても大変に興味深い施設である。
だがマツダ車の所有にかかわらず、日本の自動車史に興味のある人間であれば間違いなく楽しむことができるだろう。
100年企業となったマツダの歴史が詰め込まれたこの場所は2022年にリューアルもしたばかりで非常に見応えがある内容となっていた。
集合はマツダ本社
最新のカーラインナップが並ぶ本社ロビー
マツダミュージアムの見学は完全予約制で、例外を除いて平日のみ来場可能となっている。
集合場所はマツダ本社1Fロビーで、ここには現行の車種が展示されていて自由に見学が可能だ。
ちなみに車での来場も可能となっており、その場合は本社前の駐車場を利用できる。
受付で予約者の名を告げパスとパンフレットを受け取る
受付を済ませた後は、案内があるまでロビーで過ごすことに。
この時はCX-60の展示車がやはりの人気であり、私もこの新型車を興味津々で見ていたのだった。
バスは本社工場内を通り宇品工場へ向かう
予定の時刻になりマツダミュージアム行きのバスが到着した。
一回の見学の人数はバス一台分の定員ということらしく、余りのない座席を見るとこの回は満員という事だろう。
バスはこのままマツダの敷地を出ることなく広島本社工場を抜けてマツダ専用の東洋大橋を渡り、約10分ほどで対岸の宇品工場のマツダミュージアムに到着する。
てっきり一般道で宇品工場まで移動するのかと思いこんでいたのだが、対岸に渡れる自社の橋まであったとは驚きだ。
もちろん工場内を走行している間は撮影禁止であったが、添乗員の方の話が面白くあっという間の10分間だった。
マツダミュージアム内部はストーリーごとにゾーン分け
TCS型三輪トラック
宇品工場内にある建物に入ると、そこには美しくリニューアルされたマツダミュージアムがあった。
ミュージアム内はゾーン分けされており、最初はマツダの車作りの歴史を展示車両とともに振り返る。
戦前にDA型三輪トラックで知名度を上げたマツダ、その改良型であるTCS型がマツダが現在保有する最古の車両ということだ。
当時はマツダの販売網は薄く、三菱商事に販売を委託していたため三菱のロゴが入っていたようだ。
キャロル600とR360
旧車を好むマニアには垂涎のこのゾーンは年代別のマツダ車が並ぶ。
それにしても、これほど美しい状態のキャロル600とR360には滅多にお目にかかれないであろう。
手を触れなければ展示車両の周囲に入ることも可能なので、実にサービス満点の見学ツアーだと感心する。
名車コスモスポーツ
マツダには歴史に残る名車が数多く存在するが、その中でも最も愛されていると言っても過言ではないのがコスモスポーツだろう。
コスモスポーツの誕生はロータリーエンジン実用化の第一歩であり、まさにこの時からマツダの歴史の中で最も輝かしい物語が始まっていくのである。
展示フロアに整然と並ぶ名車たち
総合自動車メーカーとして現在に至るまで、マツダが造ってきた車たちを堪能できるこのゾーンは内容が濃すぎるあまり、全然時間が足りないのが非常に口惜しい。
係の方の説明を聞いていると見る時間が、見ていると説明を聞きそびれるという感じである。
時間のなさを悔やみつつも、この時点でリピートを誓えるほど楽しいツアーとなっていた。
モータースポーツでの金字塔を打ち立てたマツダ787B
ル・マンで活躍したマツダ787B
そしてお待ちかねのモータースポーツゾーンに移動する。
ル・マンにおいて大きな金字塔を打ち立てたマツダ787B、これを目当てに来場する人間はかなり多いだろう。
かくいう私もこれ目当てなので、割り当てられた大部分の時間をここで消費することになった。
長いモータースポーツの歴史の中でも、これほど人々の記憶に残るマシンも珍しいだろう。
ちなみにミュージアム内のギフトショップで最も売れているミニチュアカーは787Bとのことだ。
驚異のパワーを発生させる4ローターエンジンR26B
787Bの心臓は史上最強のロータリーエンジンであるR26Bである。
これに関しては説明など無粋、耳で感じるのが一番だ。
787Bは今でもイベントで走行してくれているので、私もぜひ生でこのサウンドを聞きたいものだ。
マツダの車造りを支える技術の数々
ここでは塗装やプレスの最先端技術が展示
技術展示ゾーンではマツダの車造りの様々な技術が紹介されている。
特にマツダが近年最も力を入れている塗装技術については、興味深い展示が数多くあった。
衝突実験車両のCX-30
この展示車は時速50キロでの衝突実験をしたもので、これだけの破損でもちゃんとドアが開いて避難ができるということだ。
私も今のCX-3を買うにあたりYouTubeで衝突実験の映像をみており、マツダ車の高い安全性を知って購入を決めたのである。
マツダの主力エンジンが並ぶ
今現在のマツダを支える主力エンジン、左からSKYACTIV-G、SKYACTIV-D、そしてSKYACTIV-Xだ。
他にもPHEVやマイルドハイブリッドなど電動化も徐々に展開されているので、数年後にはこれら純粋な内燃機関のエンジンは市場に出なくなるかもしれない。
特別な塗装により深いディテールを生み出す
近年のマツダで最も評価されている技術の一つが匠塗という塗装技術だ。
この展示は同じプレスの鋼板を使用して、塗り方のみでここまで見栄えが変わることを示している。
それまで赤色の車は似合う似合わないは別にして、往々にして下側の鋼板のような色味だった。
この匠塗は今までの赤色の概念をひっくり返したと言ってもいいだろう。
この後は工場内の生産ラインに入り見学をするのだが、当然ながら生産ライン内は撮影禁止となっている。
マツダは多品種混流生産を導入しており、この日は同一ラインでCX-30,MX-30,ロードスターなどを生産しているとのことだ。
コロナ禍で生産台数は減っていると思われるがラインは常に動いており、様々な工程へ運ばれていく車体を見ているのは非常に面白いものであった。
最後は港に入港している自動車運搬船を窓から見学し、工場内ラインの見学は終了となった。
次の100年へ向けたマツダの考え
躍動を感じる魂動デザインの御神体
最後のエリアはマツダの未来、この先100年に向けたビジョンを体験するエリア。
まずは魂動デザインの源流とも言うべき”御神体”が展示。
魂動ソファ
私の目を引いたのがイタリアの家具職人とのコラボで生まれた魂動ソファだった。
このソファ、かなり欲しい。
現在のMAZDA3へと繋がった魁のクレイモデル
家具や自転車のコンセプト展示を抜けると、コンセプトカー”魁”のクレイモデルが展示。
時期アクセラと噂されていた魁は、ほぼそのままの形でMAZDA3ファストバックとして市場に出ることになった。
MAZDA3は今や街で見かけることも多くなったが、周囲の車の中でも存在感が大きく、オーナーの満足度は高そうだ。
マツダの向かう方向を示したRX-VISIONとVISION COUPE
そしてミュージアムの最深部にあるのは”RX-VISION”と”VISION COUPE”である。
この存在感はまさに異質、世界の名だたるスーパーカーと並べても決して見劣りはしないだろう。
艶めかしいRX-VISIONの姿
嘘か真か、RX-9としての市販化も噂されているRX-VISION。
あくまでも願望に近い噂話だが、もし実現するならばすごいことになりそうだ。
ギフトショップではマツダオリジナルのグッズが購入可能
あっという間のミュージアム見学も終わりに近づき、到着した時と同じロビーに戻ってきた。
ここはエントリーTOPの写真の場所で、現行のマツダ車に実際に触れて楽しんだり、併設しているショップでグッズを購入することができる。
このツアーを終えた頃には皆マツダファンになってしまっているので、ショップもなかなかの賑わいを見せていた。
時間までミュージアムロビーで買い物などを楽しんだ後、我々一行は再びバスに乗り本社ロビーへ帰ることに。
席に座ってふと窓の外を見ると、真横をカモフラージュ柄を施されたCXシリーズが通り過ぎていった。
見たところCX-60のロングボディ版だったので、おそらくテスト中のCX-70かCX-80ではないだろうか。
狙って現れたのなら粋すぎるサービスだが果たして。
そんなこんなで約2時間のツアーを終え、大満足でマツダ本社を後にしたのだった。
ドライブイン黒浜の中華ランチ
抜群のロケーションを誇るドライブイン黒浜
マツダ本社での見学を終えた私は一路広島空港へ・・・と言うにはまだまだ時間に余裕があったので海沿いをドライブすることに。
その道中の安芸津町にあるドライブイン黒浜は、抜群のロケーションと美味しい料理で評判のスポットだ。
平日にもかかわらずランチを食べに来る人は多く、私は良い席に座りたいがために、少し人が引くまで付近を散歩したりした。
中華ランチ990円
瀬戸内ということもあって普通なら海鮮を頼むようなところだが、私は予め狙いを定めていた中華ランチを注文することにした。
実に良いビジュアルだ。
中華丼のようでいて、隙間から見える揚餃子と焼豚が中華丼でいることを許していない様が面白い。
あんかけは野菜と海鮮がたっぷりで見た目より遥かに凄いボリュームで、お陰で帰宅するまで他のものを食べる必要がないほどだった。
満足。
マツダは今の車で初めて乗ることになったのだが、飽きっぽい私が6年経っても飽きずに乗っているのは我ながら驚きだ。
ただ、年間走行距離の多さから、そろそろ買い替えも視野に入れなくてはと考えてもいたところでもある。
当然マツダ以外のメーカーも浮かんではいたのだが、今回のマツダミュージアムでの体験は「次もマツダを買おうかな」と思うには十分すぎるほど満足のいくものだった。
しかし今回のツアーのお陰か、買い替えも考えていた今の車への愛着が深まったので、まずは今の車を出来るだけ長く乗ろうと思う。
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