例年、広島県竹原市にある町並み保存地区で開催されていた憧憬の路だったが、昨年と一昨年はコロナウィルスの影響で開催が中止されてしまっていた。
そして2022年の今回は規模を縮小してではあったものの、関係者の皆様のご尽力により3年ぶりの開催へと向かうことになった。
竹原は人気アニメ「たまゆら」、そしてドラマ「マッサン」の舞台としても知られ、老若男女問わず全国各地から観光客が訪れる場所である。
特に「たまゆら」の作中で幻想的に描かれた憧憬の路は印象深く、初めて訪れたときに私自身もすっかりその魅力に取り憑かれてしまい、以来毎年のように通っているのだ。
なので、今回の開催決定はまさに自分にとっても嬉しい事この上ない知らせであった。
心待ちにしていた当日を迎え、しばらくぶりとなる飛行機に乗り込み、一路広島へ向かったのだった。
人気のそば店たにざきで食べられるほろ酔いセット
私が初めて憧憬の路を体験したのは2012年のこと、その時から竹原での行動パターンは自分でも呆れるくらい変わっていない。
下戸に毛が生えた程度の弱さではあるが、一応酒好きの私が竹原に到着したら真っ先に向かう場所が、藤井酒造の酒蔵交流館である。
私はいつもここでたんまりと日本酒を買込んで、その後に交流館の奥に店を構える「酒蔵そば処たにざき」の酒とそばで舌鼓を打つのだ。
町並み保存地区の最奥に位置する胡堂
照蓮寺山門前の階段は人気のフォトスポット
普明閣からは竹原の町を一望できる
午前中は憧憬の路の準備が進む
町並み保存地区には猫も多く住んでいる
修景広場に設置された風車は圧巻の規模
日中の町並み保存地区
昼間の町並み保存地区を歩くと夜への準備が着々と進んでいるのを感じ、本番への期待に胸が高まるのでおすすめだ。
特にカメラなどをぶら下げている人間には町中がフォトスポットのように感じるし、そうでなくても安芸の小京都と呼ばれる風情のある町並みは明るいうちに見るべきであろう。
私も3年ぶりに訪れたこの町の景色を懐かしむように歩いたのだった。
夕陽の頃には普明閣に人々が集まる
江戸時代の情緒が残る町並み
憧憬の路で賑わう胡堂
日没が近づくにつれ人の数も増えてきて、いよいよ3年ぶりの憧憬の路が始まる。
今回は感染予防の観点からか、道幅を確保するために竹灯りの数はだいぶ絞られている。
だが、主要な場所には例年にも負けないほど美しい竹灯りが灯り、何よりこの瞬間から町全体に満ちた空気が紛れもなく想い焦がれていた憧憬の路のものだった。
毎年大掛かりなライトアップで人気の照蓮寺
憧憬の広場の竹灯りのトンネル
旧日の丸写真館では限定でカフェが開かれていた
修景広場前のハート型の竹灯りは大人気だった
軒にぶら下がる工夫をこらした竹灯り
旧笠井邸では子供たちが願いを込めた灯籠を展示
旧笠井邸の庭では見事な竹灯りを公開
竹楽裏の広場は毎回多くの人で賑わう
地蔵堂は順路を設けて安全に見学ができた
竹鶴酒造が指南した魚飯がNIPPONIAホテルで食べれるらしい
人気の竹灯りの小道は健在
土日に渡って開催された2022年の憧憬の路は無事に終了し、好天にも恵まれて素晴らしい催しとなったのは間違いないだろう。
今回は未だ収まらぬコロナ禍での開催と言うことで手探りな部分もあったと思うが、ここまで形にしていただいた地域の皆様には頭が上がらない気持ちだ。
私が感じた例年との違いは、やはり竹灯りの規模の縮小だったが、現段階の開催においては妥当な対策だったように思う。
初めて来た人はもしかしたら物足りない印象を受けたかもしれないが、今回参加した方々は次につながる大事な一回に立ち会えたのではないだろうか。
ここで私が見たのは今までと変わらない町並みと美しい竹灯り、暖かい竹原の人々と笑顔で楽しむ人々の姿。
皆で作ってきた憧憬の路は、きっと来年も続いていくのだから。
私が初めて憧憬の路に来た時に記念に買った一枚の切符。
あまり覚えてはいないが、記念というからには正直なところ、もうそうそう竹原に来るつもりは無かったのだろう。
だがそれ以来、憧憬の路の度に竹原に訪れており、この切符はいつもバッグの中に入って色が褪せるまで付いてきてくれた。
この11年の間には色々なことがあったように思う。
たまゆらの物語が完結したり、私達にとって大切な存在だった人が遠くに旅立ってしまったこともあった。
最近では、物語の重要な舞台になった茶房ゆかりがお店を閉める決断をされたと聞いた。
私自身も以前とは同じではないだろうし、もちろん竹原だって少しづつ変わっていく。
だけどこの先何が変わっても、やはり私はこの始まりの切符を握りしめ、またここに帰ってくるのだろう。
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