先日の憧憬の路は3年ぶりの開催ということで、竹原の町が大いに賑わっていたのは既に言うまでもないだろう。
その竹原の町並み保存地区のまさに只中で、久しぶりの憧憬の路を迎えるホテルがあった。
あれは確か2018年の憧憬の路の時だったか、「ここに竹原に残る建物をリノベーションしたホテルを作っています、良かったら見学していってください」と内装の工事中だったNIPPONIA HOTEL 竹原 製塩町に入ったことがある。
明治の頃に銀行や酒屋として建てられ、その後はビリヤード場や旅館へと姿を変えていき歴史の名残を見せる建物たち。
それらの建物を活用して高級ホテルをオープンしようというので、見学しながら非常に興味を持った記憶がある。
そして今回は思い切ってそのホテルを予約し、まるで竹原に住んでいるように憧憬の路を体験してきた。
チェックイン
チェックインは旧森川家住宅で行われた
事前にホテルより連絡があり、チェックインは旧森川家住宅で行われるとのことだった。
期間限定での試みということらしいが、足繁く竹原に通う私にとって旧森川家住宅はよく知る場所で、その歴史的価値についてももちろん承知している。
そんな場所でチェックインとは、既に特別な時間が始まっていることを感じさせる体験だった。
足を止めて写真を撮る人も多い客室棟は町並み保存地区の中にある
銀行として建てられその後旅館へと姿を変えた面影を残すMOSO棟
2階の窓からは竹原の家々を見渡せ、まるで竹原に住んでいるかのような気分に
宿泊した105号室は4名定員のグランドの一室
今回私が宿泊した部屋は、ホテルフロント・レストラン棟の目の前にある「MOSO棟」の2階だった。
実はこのMOSO棟こそ数年前の工事中の時に見学した建物で、時を経て自分が宿泊しに来るとは何とも不思議な気分である。
部屋は古民家風の情緒を残しながらも決して古臭さを感じることはなく、プレミアムな客室として実に見事にリノベーションされていた。
窓際のベッドスペース。寝心地の良いマットレスは広島のサータ製
建物は年数が経っていても設備は最新。トイレはPanasonicのアラウーノ
職人が作ったという檜風呂は木の香りが心地よく大きさも十分
備え付けの色浴衣で憧憬の路を歩く素晴らしい体験をした
ホテルのコンセプトは建物が最も輝いていた時代の趣や風情を取り戻すこと。
建物の趣きを出来るだけ残してのリノベーションのため、断熱性や遮音性が現代建築に比べると劣るという事が予め謳われている。
そして、部屋にはテレビと時計がなく、日常の喧騒を忘れてホテルで過ごせるようにとの意図があるようだ。
夕食はHOTEI棟の2階へ
元は水儀本店という料亭だったHOTEI棟
夕食はフロントとダイニングのあるHOTEI棟へ。
HOTEI棟は宿泊しているMOSO棟の向かいにあり、かつては水儀本店という料亭だった建物だ。
今回はチェックインを旧森川家住宅で行ったが、通常はここの1階フロントにてチェックインをする。
2階のダイニングへ向かう廊下
ダイニングは2階にあり、襖で仕切られた1室を2組で使う形になっていた。
私はこのような窓に面した2階廊下の造りがたいそう気に入っていて、今まで竹原に来ては羨望の眼差しで見上げていた場所がまさに此処だった。
その場所を歩けるとは気分も高まるというもの、食事部屋への案内中だというのに無理を言って写真を撮らせてもらった次第である。
3酒造の飲み比べも竹原ならでは
竹原の3つの酒蔵の飲み比べセットをオプションで用意していただいた。
ドリンクはやはり土地柄から日本酒が豊富であるが、もちろん他のアルコールやソフトドリンクも充実している。
竹原の酒は私の体に良く合うようで、楽しく喉を湿らせていたら、うっかりと飲み干してしまうところだった。
数多く出てきた料理の中でも鱧のポッシェのわさびソースは絶品だった
メインディッシュは峠下牛ロース肉のグリエ
次々と運ばれてくる料理は全て美味で、地産地消を中心にしたメニューとなっていた。
その中でもこの峠下牛は今までに食べた牛肉の中でも、大変に美味なものの一つになった。
瀬戸内産白身魚の出汁茶漬け
メインディッシュの後は飯物とデザートで締めくくられる。
通常の飯物は茶漬けになるが、オプションで地元竹原の竹鶴酒造の女将直伝の魚飯に変更することが出来る。
私はおそらく酔ってしまう事を予想して茶漬けのままにしておいたが、隣のテーブル方が頼んだ魚飯を見ると非常に美味しそうだったので、次の機会には味わってみたいと思う。
ちなみにこの茶漬けもたいへんに美味で、家に帰ってからも味が忘れられず、出汁を研究して作っているほど茶漬けにハマってしまった。
朝食からチェックアウトまでは竹原の町でゆっくりと過ごせる
朝食はバランスのとれた和食
朝食はバランスの良さそうな和食で、起きたての体に優しい量だった。
ご飯と味噌汁はおかわり自由との事で、味噌汁をお代わりしたところ、2杯目は具材が変わっているという気配りが嬉しい。
朝の町並み保存地区の空気を味わえるのも宿泊者ならでは
すぐ近くにある松屋二重焼本舗の二重焼きで午前のひとときを
組子細工の障子窓は時代を超えて引き継がれている
チェックアウトは12時なのでゆっくりと竹原での時間を過ごすことが出来る。
昨晩は憧憬の路やディナーやらで慌ただしかったので、朝食後のこの時間が一番落ち着いて過ごせたと思う。
窓を開けて寝転がる、鳥のさえずる声や自転車をこぐ音、適度な雑音が心地よい。
竹原に住んでいたらこういう感じなのだろうか、と自分の日常とは違う生活を体験する貴重な時間だった。
町並み保存地区にあるもう一つの客室棟KIKKO棟
今回は憧憬の路に合わせて宿泊したホテル「NIPPONIA HOTEL 竹原 製塩町」の宿泊体験記という記事となった。
一泊のお値段は決して安くはないが、食事やサービスは非常に満足のいくものであったし、リノベーションされた客室も趣があって居心地が良かった。
何よりも竹原の町の中での生活を体験できるというのが素晴らしい。
今回だけ奮発して・・・というつもりだったが、もう来年の予約も検討してしまおうかというくらい気に入ってしまった。
次回泊まることがあれば、もう一つの客室棟「KIKKO棟」に宿泊してみたいものだ。
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