蘇る昭和の日々 釜石線を走るSL銀河と、マルカンビル大食堂のナポリカツ

 

ゴールデンウィークの東北旅行は青森を経て岩手にやってきた。

旅程を練っている時に花巻付近で何か撮れないかと調べたところ、どうやら釜石線を走るSL銀河とスケジュールが合いそうなので寄ることにした。

一日に片道しか走らないが、日数に余裕のある今回のゴールデンウイークならば往路と復路で撮影する機会がありそうだ。
そもそもぼくはSLが走っているのを見るのは初めてなので、撮影を抜きにしてもすごく楽しい日程になりそうである。

そして花巻に来た最大の理由は、ファンが支えた奇跡の食堂「マルカンビル大食堂」を一目見ること。
その念願もついに叶うことになった。

 

 

 

 

釜石駅~花巻駅を走る釜石線を辿るロケハンの日々

釜石線

釜石線は釜石~花巻間を結ぶJR東日本の路線

花巻に到着した初日はあいにくの空模様だったが、この日はSL銀河が釜石駅~花巻駅を走るので撮影場所を朝から探して回った。

ロケハンも兼ねて釜石線の姿もダイヤの合う限り撮っていくことにした。
普通列車は2両編成のディーゼルで、快速のはまゆりだと4両編成で運行されているようだ。

自分の生活圏だとJR相模線が昔ディーゼルであったか、あまり乗らなかったがのんびりした車窓の眺めを微かに覚えている。
そう思いながら、ゴゥと唸りを上げて直線を駆け抜ける釜石線の姿を見送った。

 

 

綾織駅から花巻に向かう始発列車

綾織駅から花巻に向かう始発列車

SL銀河は中一日挟んで往復というダイヤだったので、それに合わせ3日間滞在し釜石線を撮って周っていた。

初めてこの土地に来てそのまま思いつきで撮り始めたようなものだから勝手が全く分からない。
滞在していた3日間はとにかく朝から撮影地を探して回っていた。

 

 

陸中大橋駅付近の鉄橋

陸中大橋駅付近から鉄橋を見上げる

沿線を何往復もしているとあっという間に時間が過ぎてしまう。
撮影スポットに着いても本数が少ないので電車はすぐに来てはくれないが、それが地方ローカル線の楽しさなのかもしれない。

この陸中大橋駅付近の鉄橋が気になったので列車が通るまで1時間ほど待つことにした。
2両編成だとバランスの良い収まり具合で良いのだが、SL銀河だと編成が収まりきらないか。

SL銀河は別のスポットを引き続き探すことにしたが、この鉄橋は非常に気に入ったのでまたいつか天気の良い日に来てみたい。

 

 

快速はまゆり

釜石駅から快速はまゆりに乗車する

撮られる側から見たほうが撮影地を探しやすいかと思い、車を釜石駅に置いて遠野まで往復した日もあった。

釜石駅も東日本大震災において建物の倒壊などは無かったものの、乗り入れている釜石線・三陸鉄道が甚大な被害を被った。
つい先日に三陸鉄道リアス線が開通し、震災による不通区間が8年ぶりに解消されたとのニュースはまだ記憶に新しい。

 

 

松倉駅入線

先頭車両から松倉駅入線を眺める

 

 

遠野駅

遠野駅へ入線してくる普通列車

 

 

釜石線

宮守駅~岩根橋駅の間の田園風景の中を走る釜石線

沿線を色々巡って1番気に入ったのはこの宮守駅から岩根橋駅の間に広がる田園風景だった。

ちょうど花が咲き緑が吹き出すこの季節に美しい景色を見せてくれた地域だった。
3日目に晴れてくれたのだが、この日はSL銀河は去っていく方向になるので諦め、代わりに釜石線を撮影した。

こののどかな風景には生活の足になっている車両の方が絵に似合っているかもしれない。

 

 

 

 

釜石線を走るSL銀河を捉える

SL銀河

 

1日目のSL銀河は釜石駅〜花巻駅の運行。
撮影は雨の中、柏木平駅近くの林の中から行った。

もう少し広く撮りたかったが、新しい電柱がフレーム外にありこれが精一杯だった。

しかし、力強く勾配を登ってくる銀河がとても格好良かった。
雨の中同じ場所で撮っていた方々と思わず声を掛け合うほどだった。

 

 

SL銀河

めがね橋を渡るSL銀河を道の駅みやもりから見上げる

上の撮影から2日後、花巻から釜石方面に向かって再び運行されたSL銀河を道の駅みやもりから撮影した。
朝からの強風でダイヤが乱れていたものの、定刻よりやや遅れて無事に宮守駅を出発してくれた。
ただあまりの強風のために煙がかなり乱れてしまっているのが残念。

このあとSL銀河は遠野駅で1時間ほど停車する予定なので、釜石駅近くの撮影スポットへ先回りで向かうことにした。

 

 

SL銀河

鱒沢駅で抑止されるSL銀河

釜石方面に向かって車を走らせていると鱒沢駅でSL銀河が抑止となっていた。

停車予定ではない駅なのでトラブルかと思ったが、あまりの強風につき釜石線が運転を見合わせているらしい。
結局、SL銀河は釜石まで行かずに遠野駅で運行取り止めになるとのことだった。
この先は高架もあるので賢明な判断だったと思う。

ただ、前の2日かけて探した撮影スポットが無駄になってしまったのが無念である。

 

 

SL銀河

鱒沢駅での抑止のおかげで思わぬ見学を楽しめた

しかし、鱒沢駅での思わぬ抑止のおかげで、もともと予定していなかった停車中のSL銀河の見学が楽しめた。

運行に携わる職員の方々も何人かメンテナンスで降りてきていたが、意外にも若い方ばかりなので驚いた。
SLというと職人気質のベテランが運行しているイメージだったが、考えてみれば現役最年長でも最年少でもSLに関しての経験は差がないのだろう。

若い世代の方々がSLを運行してくれているのは何とも嬉しいことだ。

 

 

 

 

花巻の奇跡の食堂 マルカンビル大食堂

マルカンビル

花巻の中心部に立つマルカンビル(旧マルカン百貨店)

かつて花巻にあったマルカン百貨店展望大食堂をご存知だろうか。

マルカン百貨店は昭和の時代どこの街にもあった小さなデパート、そこの展望大食堂は街の人々が集まる憩いの場所であった。
だが時は流れ建物も老朽化し、現行の耐震基準を満たさない診断が下されると経営陣は百貨店の存続を断念。

そして2016年6月7日、人々の思い出の詰まったマルカン百貨店は大食堂と共に43年の歴史に幕を下ろすことになった。

 

閉店が発表されて間もなく、高校生を中心としたマルカン大食堂の移転存続を求める署名活動が活発化。
やがて株式会社花巻家守舎による「マルカン大食堂 運営存続プロジェクト」が発足し、大食堂を含めた建物全体の運営引継ぎがクラウドファンディング等による資金調達を経て実現する。

必要な改修工事や事前準備を行い、マルカン大食堂は2017年2月20日、マルカンビル大食堂として再びオープンすることになった。

 

 

マルカンビル大食堂

開店前のマルカンビル大食堂

開店は11時からだが10時から列を作って並べると聞いて、年代物のエレベーターで大食堂のある6階まで昇る。

念願だったマルカンビル大食堂を目の前にして心が踊った。
広大なスペースに敷き詰められたテーブルと椅子、そのひとつひとつに地域の人々の思い出が詰まっていると思うと胸が熱い。

さすがに早く並びすぎたかと思ったが、ゴールデンウイークもあってか瞬く間に開店待ちの行列は伸びていった。

 

 

マルカンビル大食堂のナポリカツ

マルカンビル大食堂の名物ナポリカツ

マルカンビル大食堂で最も有名なメニューはやはりこのナポリカツだろう。
花巻市民のソウルフードといえばこのナポリカツと言っても過言ではないらしいほど地域で愛されてきた食べ物だ。

昔ながらのナポリタンにチキンカツ、そして新鮮な野菜をワンプレートにした賑やかなこのセットは人気No.1の看板メニュー。

 

 

マルカンビル大食堂のナポリカツ

オーソドックスな味付けは子供にも安心して食べさせられる

味は子供にも安心して食べられるような優しい味だった。

マルカンビル大食堂では子供を連れたお客さんが非常に多く、子供が笑顔いっぱい楽しそうに食べる姿が印象に残った。

この光景を何十年も繰り返してきた食堂が一度は無くなったとはとても信じられないが、地域とともに積み重ねてきた数々の日々があったからこそ、ファンに支えられて奇跡の復活を成し遂げることが出来たのだろう。

 

 

マルカンビル大食堂のソフトクリーム

もはやシンボルマークとも言えるソフトクリーム

ナポリカツと並んで人気なのが、このうず高く巻き上げられたソフトクリームだ。
あまりにも長いので持つことは難しく、ローカルルールだが箸で食べるのが作法になっている。

このボリュームでなんと180円という安さで、子供からお年寄りまでに大人気のメニューとなっているのも頷ける。
混んでいる時間帯だと機械の関係かホルダーの関係か、出てくるまでに長時間の待ちが発生するほど。

 

 

マルカンデパート大食堂の寄書き

閉店時の寄せ書きは今でも階段に飾られている

 

 

マルカン百貨店閉館までの写真

マルカン百貨店閉店までの日々を写した写真の数々

 

 

マルカンビル大食堂のメニュー

入り口にある多彩なメニューサンプルの一部

 

 

マルカンビル大食堂グッズ

1Fでは数々のマルカングッズを販売している

奇跡の復活を果たしたマルカンビル大食堂の素晴らしいところは、若い経営者によるリベラルな資金調達手法と「6階大食堂を可能な限りそのまま残す」という強い意思による舵取りだと思う。

そして大食堂という箱ももちろんだが、何よりも当時のスタッフを半数も確保出来たのが最も重要な部分だろう。
これにより百貨店時代の大半の売上を叩き出していた大食堂を、ほぼそのままの姿で復活させることに成功した。

ちなみに1Fの売り場でグッズを購入するとマルカンへの寄付となるとのことで、微力ながら数点購入させていただいた。
このマルカン思い出写真集「MARUKAN IMAGES」は、まるで自分が小さい頃からマルカン百貨店に行っていたかのような気持ちになれる素晴らしい写真集だった。

 

昭和と平成を駆け抜けて惜しまれつつ閉店、そして奇跡の復活を遂げたマルカンビル大食堂。
これからも様々な困難が待ち受けていると思いますが、花巻のシンボルとして長く存続していってくれることを願います。

 

 

 

 

というわけで「蘇る昭和の日々 釜石線を走るSL銀河と、マルカンビル大食堂のナポリカツ」でした。

今回のゴールデンウイークのおかげで、行きたかった場所に行くことができました。
弘前さくらまつり、マルカンビル大食堂は東北の中でも最優先で行きたい場所だったので、一応はエントリーとして残せる程度の経験も出来て良かったと思う。

今後も東北の気になる場所を開拓し、楽しく伝えられればと思います。