潮待ちの港御手洗 歴史の見える丘公園から見る瀬戸内と、尾収屋の鍋焼きスペシャル

 

bar_introduction

 

今年の憧憬の路を見るために訪れた広島、2日目は早朝から大崎下島の御手洗地区に足を運んだ。

御手洗へは過去にも数度訪れているが、時間に追われての観光ばかりしていた気がする。
なので、今回は早朝には大崎下島に着き、午後までゆっくり過ごせるように予定を組むことにした。

早朝4時前には広島空港近くのホテルから大崎下島へ向かって車を走らせ、あわよくば御手洗のみかん畑周辺で日の出を撮ろうという寸法だ。
そして、またしてもホテルの朝食にはありつけずにチェックアウトとなった。

もう今後は朝食なしで予約したほうが良さそうである。

 

 

 

ber_today

 

歴史の見える丘公園

呉から橋伝いに幾つもの島を渡り、日の出前には大崎下島へ到着することができた。

歴史の見える丘公園はみかん畑の頂上にあり、最初に来た時は階段を登るのが大変だったのが思い出深い。
ようやく登りきって頂上の駐車場を見た時に、これからは絶対に車で来ようと固く誓ったものだ。

 

 

みかん畑で早朝を過ごした

当初は日の出を狙っていたが早朝は雲が多く、残念ながら日の出は拝めなかった。

みかん畑沿いの道路でのんびりしていたら、やがて雲が晴れ太陽が顔を覗かせてくれた。

 

 

有名な新光時計店も御手洗の町に店を構える

竹原からの観光客を乗せた朝の高速船が到着するまでは、御手洗の町がほぼ独り占めできる。

神功皇后がこの地で手を洗った、というのが御手洗という地名の由来である。
1600年代に入り日本海から大阪に至る海運ルートが確立されると、御手洗は潮待ちの港として大きく発展を遂げることになる。

 

 

現在の乙女座は当時の建築をそのままに再建されたもの

そうして大きな繁栄を遂げた御手洗だったが、港町・遊郭の町としての姿は昭和初期まで続くものの、明治時代以降の汽帆船の登場や鉄道による物流の変化のため次第に衰退していくこととなる。

残念ながらかつて栄えた港町としての姿を今の御手洗には見ることができない。
だが、そうした歴史を辿りながら巡ると、かつての喧騒がすぐ側に感じられる情緒深い町並みがそこにはあった。

 

 

伊能忠敬測量絵図館には貴重な測量図などが展示

かつて伊能忠敬が瀬戸内の測量をする際に宿場としていたのが御手洗である。
ここ伊能忠敬測量絵図館では貴重な測量図が展示されており、小さな展示室ながらも偉人の足跡を感じられるものだった。

この貴重な展示物、このセキュリティで大丈夫なのだろうかと素人ながらに心配もしてしまったのであった。

 

 

足長小学生の看板は人気のフォトスポットのひとつ

御手洗地区は決して広くはないが、その深い歴史など観光密度の高さはかなりのものだ。

この週末は竹原で憧憬の路が開催とあって、日中はそれなりの訪問客を見かけた。自分もそうだ。
TVアニメ「たまゆら」ゆかりのスポットも多いので、それがこの町を訪れるきっかけにもなっているのではないだろうか。

この静かな潮待ちの港で騒ぐ観光客を見たことがない。
そんな居心地の良さも、御手洗という土地の魅力なのだと思った。

 

 

歴史の見える丘公園からの展望は瀬戸内随一の景観を誇る

太陽が登りきった頃合いを見て、再び歴史の見える丘公園を訪れてみた。

雲の感じはやや半端なものの、今まで来た中では一番の快晴だったのでシャッターを切る指も弾む。
手前のみかんが収穫されずに残ってくれていたので、好物の大長みかんをフレームに入れて撮影ができた。

我が家では毎年大長みかんを届けてもらっていて、特に今年は蜜のように甘くて美味しいみかんだったので既に30kgも消費してしまった。
おすすめは小粒の秀品、みかんの形をした蜜袋である。

 

 

 

 

 

 

 

広島名物がんすも入った尾収屋の鍋焼きスペシャル

御手洗での昼食は前々から食べてみたかった「鍋焼きうどん尾収屋」でお願いすることにした。
以前は新光時計店の隣にあったようだが、現在は潮待ち館の中で営業しているようだ。

注文したのは贅沢な具が満載の「鍋焼きスペシャル」。
肉入り、玉子入り、しかも広島名物のがんす(練った魚を揚げたもの)まで入っている豪華さだ。

うどんは細身でツルツルと食べやすく、つゆも優しく味わい深い。
普通に毎日食べたいぞ、都内で出したら受けるに違いない。
そう思いつつ、ここでしか食べられないことに最高の贅沢も感じながらつゆを飲み切るのだった。

 

 

潮待ち館のカフェも魅力的なメニューが多くあった

会計は別となるが、同じ席で潮待ち館のカフェも利用することが出来る。
そこで、メニューで気になった2色のクリームソーダを注文することにした。

ソーダの2色は注文時にリクエスト、色が混ざってうまくいかない事がある旨を了承し、赤と青でお願いすることにした。
もし混ざってしまったらもう一杯おかわり注文しよう、そう考えながら待っていたら一発で素晴らしいソーダを作っていただけた。

素敵な店内でいただくお洒落なクリームソーダ。
多くの歴史の通り道となったここ御手洗で、潮待ち風待ちをしている気分にしばし浸るのであった。

 

 

 

 

ber_afterword

 

呉市の助成事業で大崎下島までの交通費が半額に

御手洗のある大崎下島までは安芸灘大橋有料道路を通行するため片道730円(普通車)の通行料がかかる。
通常だと往復で1460円かかるわけだが、安芸灘大橋有料道路回数通行券助成事業を利用すると帰りの通行料分の回数券を貰うことが出来る。
利用方法は指定施設で1000円以上の買い物をしたレシートと行きの通行料の領収書を回数券交付施設に提示するだけ。

ちょうど潮待ち館が指定施設であり回数券交付施設でもあったので、鍋焼きうどんとクリームソーダ代で要件を満たせたのであった。
このキャンペーンは通年実施されていてお得感も高いのでぜひ利用するべきであるが、ちょっと宣伝が地味なのか潮待ち館のチラシを見るまで全く知らない仕組みだった。

 

御手洗でゆっくりとした時間を過ごした後は、再び竹原に移動し2日目の憧憬の路を楽しんだ。
帰りの飛行機を遅めにしておいたおかげで、竹原でかなり時間を取れて狙っていたイメージを撮ることも出来た。

今回の広島旅行は9年目ということもあり、惰性感が強くそれほど乗り気ではなかった。
どこも行き尽くしたつもりだったが、最初の年に訪れた御手洗を再び歩いてみると多くの気付きがあった。

時間が止まったような御手洗の町でも、風は吹き潮は流れそれがまた歴史になっていく。
1年後には今日の御手洗が変わらずあるわけではなく、そこには1年後の御手洗がある。

ぼくが全てを見尽くしたなどとおこがましい事を考えた時は、またここに来ようと思う。