今年の夏の行楽はいくつか思い描いていた事があったものの、結局はほとんど実行することは出来なかった。
理由はと言えば、やはり暑さと出先での人の多さを考えてしまい、なかなか重い腰が上がらなかったのが一番の要因だった。
今となれば盆休みに予定通り東北への車中泊旅行へ出掛けていれば良かったと後悔してしまう。
9月に入り、秋の旅行前にどこか行きたいと思っていたところ、ちょうど晴れそうな週末休みが出来たので金峰山に登ることにした。
金峰山(きんぽうざん・きんぷさん)
金峰山は、山梨県甲府市と長野県南佐久郡川上村の境界にある標高2,599 mの山である。別名「甲州御岳山」。
奥秩父の主脈に位置し、1950年(昭和25年)7月10日に指定された秩父多摩甲斐国立公園の区域に含まれている。
日本百名山、新日本百名山、花の百名山および山梨百名山のひとつ。
山梨県側では「きんぷさん」、長野県側では「きんぽうさん」と呼ぶ。wikipediaより
金峰山は先日登った瑞牆山と同じく秩父山地に属する主脈の一つで標高は2599m。
2000メートルを超える山ではあるものの、今回の登山口となる大弛峠駐車場は2200mにあるため高低差は非常に少ない。
難易度としては初級〜中級程度のコースで、子供でも登れる日帰り登山スポットということだ。
前回の瑞牆山では5D4が大きくて岩を登りにくかったので、今回はα7IIと24-70Z、16-35Zで登ることにした。
20:11 大弛峠駐車場
自分の車中泊スタイルも洗練されて益々快適に
夕方に自宅を出発し、下道で4時間ほどかけて大弛峠駐車場に到着した。
登山口に隣接する便利な駐車場ではあるが、駐車台数が少ないため週末になると朝までに全て埋まってしまう。
今回は前夜に現地入りしたおかげで路駐することなく駐車スペースを確保することができた。
車の中で仮眠して朝を待つのがすっかり板についてしまって、かなりリラックスして過ごす事が出来るようになった。
先日購入したテーブルは運転席を前方に倒した状態でも水平に出来る調節幅の広いタイプで、後席でくつろぐ自分にはぴったりのアイテムだった。
夕食を食べたりアニメを見たりしてしたが、大弛峠駐車場はトイレはあるが携帯の電波はかなり厳しい。
しばらくは3GでTwitterを見ていたりしたが、ある時間を境に全く電波が入らなくなってしまったことと、標高が高いせいか酔いが早く回ってしまい、この日の晩はあっという間に寝てしまった。
5:00 起床
大弛峠駐車場からの雲海
朝起きると駐車場から広大な雲海を見ることができた。
もう少し開けた場所だったら良かったのだけど、こんな場所に駐車場があることが凄いことなので贅沢は言っていられない。
この時間になると駐車場は満車になっていて、それでも次々と車が登ってきては路肩に駐車していた。
ちなみにルールさえ守れば路肩でも問題なく停められるのだが、ぼくは山行中に車が気になってしまうのを嫌って前日入りしたのであった。
6:00 登山開始
登山口から続くシラビソの森
駐車場のすぐ脇にあるポストに登山届を入れて入山、しばらくはシラビソの森の中を歩きゆっくりと高度を上げていく。
シラビソは一定のサイクルで親木が一斉に枯れて、それによって下の若木に光が当たり一斉に育つという世代交代を繰り返しているらしい。
そのシラビソの森が帯状に枯れる八ヶ岳の縞枯山がいい例だが、ほど近いここ金峰山でも立ち枯れの木々が多く見られた。
付け焼き刃の知識でも知っていて歩くと楽しいので、登山前はウィキペディアのチェックをおすすめしたい。
7:30 朝日岳
朝日岳の岩場は皆足を止めるスポット
目指す金峰山までは幾つかのポイントがあるが、一番の休憩ポイントになっているのが朝日岳頂上手前の岩場だ。
岩をよじ登っていくと、見ての通り素晴らしい景観が待っている。
しかし、それほど広い場所ではないので、あんまり居座らないほうが良さそうだった。
立ち枯れの森から望む五丈石
朝日岳を一旦下って立ち枯れの森を見上げると、五丈石の堂々とした姿がそこにあった。
大弛峠からのルートは幾つものこぶを越えていくので、せっかく登ったと思ったらすぐに下るという事の連続で精神的に疲れてくる。
8:30 金峰山東肩
ハイマツが広がる金峰山の東肩
時より見える五丈石の遠さにため息をつきながらも、地道に高度を上げていたら周りが一気に開けた場所に出た。
金峰山の肩だ。
周りの皆も向こう側に見える景色が気になるのか、重くなっていた足が浮力を得たかのように軽く前へ出ていっていた。
金峰山から望む瑞牆山と八ヶ岳
向こう側に出るとそこには素晴らしい景色が広がっていた。
目の前には先日登った瑞牆山の全景が見え、特徴的な大ヤスリ岩もちゃんと判別できる。
そして奥には八ヶ岳の峰々がその姿を雲の上に覗かせていた。
主峰の赤岳から続く稜線歩きはぼくにとっても憧れの道なので、次のシーズンには行けるように頑張りたいところ。
金峰山の頂上まであと少しの尾根歩き
目指す金峰山の頂上はあのガレ場を超えた所にあるようだ。
その先には五丈石も見えてテンションは上がるばかり。
周りが開けてからは高山植物に囲まれた登山道といい最高の眺望といい、まさにご褒美と言うにふさわしい時間を過ごせた。
9:00 金峰山山頂
山頂標識は岩場の中に
途中写真を撮るので立ち止まることが多かったせいだろうか、コースタイムを若干オーバーしての登頂。
周りは大岩ばかりでよじ登って来るのが楽しいが、記念写真を撮る人も多いので標識だけ撮影するのは至難の技であった。
標高は2,599mにも関わらず子供でも来れる手軽さの金峰山。
長野では「きんぽうさん」、山梨では「きんぷさん」と読み方が違うらしいが、僕の周りでは「きんぷさん」と読む人しかいないので僕もそう読んでいる。
金峰山の山頂から見る五丈石と富士山
五丈石と富士山を視界に収められる山頂からの眺めは最高だった。
2,000mを越える山だけあって、爽快さが全然違うのを五感で感じることが出来る。
この日は朝から富士山が見えていたのと、雲海も程よく広がっていて気持ちが良かった。
ヤマメシの定番
五丈石がよく見える岩の上で昼食にすることにした。
お湯は車で沸かしてボトルに入れてきたので早く食べれる。
最近はこのスタイルだがカップ麺はザックのスペースを取るので今度リフィルを買ってみようか。
頂からは湧水が湧き甲斐の水源になったと伝えられる五丈石
甲府市のHPによると、五丈岩には神代の昔に大己貴命(おおなむちのみこと)とともに国造りにあたった小彦名命(すくなびこなのみこと)が鎮座するとされ、「御像岩」と呼ばれていたとのこと。
また、日本武尊(やまとたけるのみこと)が東征の時金峰山に登り、この山が霊地であると感じ、御像岩の下に社殿を建てたといわれている。
自分の言葉に置き換えられないのでまるっとコピペだが、何でこの石がこの形であるのか誰も知らないようだ。
数千年前に人が運び込んだとも言われているようだが、山頂の石を重ねたのかも知れないし、何かの偶然で完全に自然の物なのかも知れない。
ただ金峰山の信仰は遥か昔から五丈石と共にあり、山頂からは土馬や水晶などの出土品も多く見つかっているとのこと。
神代の光景がそのまま残っていると思うと、すごい場所に来てしまったものだ。
金峰山から大日岩方面への尾根
千代の吹上を通り富士見平小屋・瑞牆山へと続く岩の稜線は、まるで天空の遊歩道のようだった。
あちらのコースは大日岩を経由して瑞牆山方面への登山道で、ヤマノススメでも登場した場所。
10:00 下山開始
いつの間にか上がってきたガスに包まれ始める五丈石
金峰山で1時間ほど休憩していたが、トイレに行きたいので早々に下山することに。
山頂から直ぐの金峰山小屋で借りようかと思ったが、小屋まで降りてからの登り返すのを嫌って大弛峠駐車場まで我慢することにした。
最近妙に頻尿なのだけど、実際はそれほど入ってないので恐らく駐車場まで持つだろう。
下山途中に後ろを振り返ると山頂はみるみるガスに包まれていき、丁度いい時間帯に山頂に居れた幸運に感謝したのだった。
12:20 大弛峠駐車場
大弛峠駐車場には乗合タクシーも
駐車場に戻るやいなや即トイレに駆け込んだ。
小なので携帯トイレでも良かったのだが、ポピュラーなコースで人も多いし可能な限り我慢してしまった。
下りは撮影など寄り道をしてないせいかコースタイムは登りより短かった。
ただ下山なので最終的にに標高は下がるものの、基本アップダウンを繰り返すコースなので帰りが大幅に時短されるわけでもないと思った。
駐車場も昼になると帰る登山客がいるのでポツポツ空いてくる。
ぼくも対向車が来ないことを祈りつつ、狭い峠道を通り帰路に付くことにした。
そば丸の野菜天盛りともりそば
古民家の建材を使ったような内装は落ち着いた雰囲気
そば丸は大弛峠を下って中央道方面に向かうフルーツラインの側にある人気の蕎麦店。
古民家の建材を利用した建物は広く落ち着いた雰囲気で、駐車場も広いスペースが用意されている。
この店は街からは外れた場所にあるが、金峰山や西沢渓谷の帰り道に立ち寄るには丁度良い立地なので、前々からマークしていたのだ。
もりそば(わさび一本付)は900円(税抜)
もりそば(わさび一本付)を注文し、そばが出てくるまでわさびをおろして待つ。
とんかつ屋で胡麻を摺って待つアレと同じ感じだ。
白に近くて美しい色をした蕎麦はとても美味しくて食べやすかった。
山梨の蕎麦と長野の蕎麦は両方好きだけど、どちらかというと山梨のこういう蕎麦が好みなので嬉しい。
ボリューム満点の野菜天盛り合わせは800円(税抜)
蕎麦だけでは物足りないので、別に野菜天の盛り合わせを頼んだ。
「ちょっと一人では多いかも・・・」と心配してもらったが、サクサクの天ぷらは幾らでも胃の中に吸い込まれて行くので、全く問題なく完食出来た。
完食したのを見て心配してくれた店員さんも喜んでくれた、接客も非常に良い店だ。
ねっとりした食感がくせになるそばどうふきな粉黒蜜300円(税抜)
このまま〆るには物足りなかったので、そばどうふきな粉黒蜜を追加で注文。
味は歯ざわりがねっとりしたくず餅のようで、見かけ通りで非常に美味しかった。
きな粉と黒蜜をかけて美味くないものがこの世にあるのだろうか。
そばも天ぷらも美味しくて満足だった。
こうなると温かいそばや丼ものも気になるところだ。
他にもそばプリンというものがあったので、次回の訪問時にも是非いろいろ頂いてみたいものだ。
あとがき
瑞牆山に続いて金峰山も好天のうちに登ることが出来て幸運だった。
今年はそれぞれ単独での山行になってしまったが、富士見平小屋でテントを張り1泊で2座を登るルートも人気ということだ。
それはヤマノススメの作中でも紹介されたので、次はテン泊装備で金峰山・瑞牆山を楽しみたい。
五丈石に登った方が写真を撮っていたら欲しいとのことで、一眼→自分のiPhone→Airdropで相手のiPhoneに転送してあげた。
こういう状況の時にAirdropをよく使うが本当に便利な機能である。
自分が五丈石に登ることは一生無いだろうが、何でこんなものが山頂にあるのか摩訶不思議でならない。
数千年前に人が運び込んだなんて話もあるが果たして。
しかし遠方からもその姿を見ることが出来る五丈石、その神々しさは昔も今も変わりないものなのだろう。
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